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在ること、不在ること。 [その他]

2012100201.jpg
(FUJIFILM FINEPIX X100 / adobe Lightroom3.6)

 

 

 

今朝、いつものようにコーヒーを飲みながら朝刊に目を通していて、驚いた記述がありました。
記事ではなくコラムなのですが、その書き出しに次のような文章が綴られていました。

『風邪で休んだはずの子がその場にいるように級友たちと並んで写っている。
修学旅行や卒業アルバムで撮る今どきの記念写真だ。デジタルの技でうまく合成する手法が増えている。
一昔前は写真の右上、小さな丸の中が欠席した子の「定位置」だった。
そこに自らの顔を見つけ、ほろ苦さがよみがえる人もいるだろう。
合成は学校の気配りという。昔からの写真館には複雑な思いもあるらしい。(後略)』
中国新聞 平成24年10月2日付朝刊 「天風録」より引用】

このことを仕事場で話題にすると、「最近そうみたいよ。」の一言。
どうやら私が世間知らずであったようです。
しかし、この内容に違和感を抱くのは私だけではないはず。
こうして出来上がったものはすでに”写真”ではなく、単なる”画像”なんだろうとおもいます。
そこになんの思い出の断片が写っているのか。
そういう操作を望む学校、引いてはそれを望む、或いは要求する保護者に対して怒りとも、失望とも、呆れ
とも違う何とも言えない感情が込み上げてきました。

そもそも、”写真”とはどういう意味なのか。

”真実”を写すものなのか。
”真実であるかのように”写すものなのか。
或いは、よく用いられますが、撮影者の”心”を写すものなのか。
ひいては撮影者自”身”を写しているのか。

デジタルデータだから、上手に違和感なく画像合成ができるので単純に「デジタル対アナログ(銀塩)」的な
話になりそうですが、銀塩写真だって、必ずしも本当のことを写している訳ではありません。
トリミングや焼き込み、覆い焼きと言った操作は「こう見せたい。」という作者の作為によって行われますし、
何より広い視野の中からある一部分だけをフレーミングすること自体に、その光景に対する作者の”解釈”が
入り、それは万人とは違う解釈である意味”真実”ではないかもしれません。

仕事場の後輩K君のご両親が以前、ベトナム旅行に行かれたそうです。
有名な観光地(「ハロンベイ」でしょうか)で、団体旅行に付きものの集合写真を撮ったそうです。
当日は生憎の雨と霧で景色を堪能することはできなかったそうです。
しかし、出来上がった写真には背景に晴れ上がった空の下、風光明媚な景色の前で写っている自分たちの
姿があったとか。
この写真は現地に行かなくても造れた写真です。
これが気配りなら、なんと気の利かない気配りでしょうか。
私ならきっとその場で破り捨てていたことでしょう。

学生時代、先輩の紹介で小学校の卒業アルバム用写真撮影のアルバイトをしていました。
開催日が重なり、正規のカメラマンだけでは対応できない運動会や卒業式に出向き、撮影していました。
単なる記録写真ではなく、その場の雰囲気が少しでも表現できればと自分なりにフレーミングに気をつかい
ました。
しかし、今後はそういう写真にも、綱引きの時に居なかった子が隅のほうで綱を持っている姿が合成される
ような時代が来るのでしょうか。
それはもう、”記念写真”ではなく”心霊写真”です。

 

以前、ネットで昔にあったであろうことを検索していて、ちょっと怖い思いが頭をよぎったことがあります。
今、ネットの中ではブログなどの個人のポストで、「昔、こういうことがあった。」とか「以前はあの街に◯◯が
あった。」とか昔話の記述があり、そんなことでも検索にヒットすることがよくあります。
私の子供の頃の記憶で、市内に連結バスが走っていたのを見かけた記憶があるのですが、いくら検索しても
私と同じ記憶を共有するようなものはヒットしませんでした。
こうなると自分の記憶に自信がなくなってきます。
逆に、在りもしないことをさも在ったかのようにネット上に書いてしまうと、存在可能性がゼロだったものにコンマ
数%でも存在可能性を与えてしまうことができるのではないか。
そんな恐怖心を覚えたことがあります。

 

 

幾分か朝からの気持ちの整理をつけようと、頭に単語の浮かぶままタイプし続けてきましたが、なんだか余計
にこんがらがったみたいで申し訳ありません。
ダラダラとした駄文にお付合いくださりありがとうございました。

 

最後に、今日のポストとコメントにはなんら関係はありませんでした。
スイマセン。

 

 

 


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コメント 2

hideyuki2007y

フイルム写真の記念写真でも、より美しくするために修正を施すのだそうですね。なにが真実でそうでないのか、人間の記憶とネット上に分散させられている様々な事実とそうでないものの真否を判定するのはどんどん難しくなってきています。
by hideyuki2007y (2012-10-03 13:18) 

icarus

>hideyuki2007yさん
面倒臭い世の中になってきましたね。
by icarus (2012-10-07 22:31) 

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